性暴力とは、望まない性的な行為を強制されることです。性暴力は、年齢や性別に関係なく、誰にでも起こりうる問題です。性暴力には、強制性交や準強制性交などの刑法で定められた犯罪だけでなく、セクハラやストーカーなどの民事上の不法行為も含まれます。
性暴力は、被害者の心身に深刻な影響を及ぼすだけでなく、加害者にも重大な責任が生じます。この記事では、性暴力に関する法律と罰則を分かりやすく解説し、加害者・被害者の立場になったらどう行動すればいいのかも紹介します。
性暴力とはそもそも何?
性暴力の定義
性暴力とは、相手の同意がないか、または同意が得られない状態にある相手に対して、わいせつな行為や性交等を強要することです。
相手の同意が得られない状態とは、例えば、暴行や脅迫によって抵抗できない状態や、心神喪失や酩酊などで判断能力が低下している状態を指します。
また、相手の同意があっても、その同意が自由なものだったかもポイントです。
例えば、職務上の上下関係や親子関係などで相手が拒否しにくい状況にある場合や、相手が未成年である場合などは、同意は無効とみなされる可能性があります。

同意があったと主張しても無効とみなされる場合があるのはポイントの一つです。
性暴力に対する近年の状況
近年、性暴力に対する社会的な関心や認識が高まっています。特に、#MeToo運動やブラックボックス事件などの影響で、被害者が声を上げることが増えたり、加害者への批判が強まったりしています。また、政府も性暴力防止に積極的に取り組んでおり、2021年10月1日から施行された刑法改正では、性犯罪の要件や罰則が見直されました
さらに、教育現場でも児童生徒への性暴力防止に関する取組が推進されています。

昔と比べると現在は、被害者が声を上げる事が増え、性暴力防止の取組みも推進されているといます。
性暴力に関わる法律は?
性暴力に関わる法律の種類と罰則
性暴力には、強制性交や準強制性交などの刑法で定められた性犯罪のほか、セクシュアルハラスメントやストーカー行為なども含まれます。 刑法で定められた性犯罪には、以下のようなものがあります.
・強制性交等:暴行や脅迫を用いて性交等を強制した場合。6か月以上10年以下の懲役。
・強制性交等致死傷:強制性交等の結果、被害者が死亡または負傷した場合。5年以上の懲役。
・準強制性交等:被害者が心神喪失や心神耗弱の状態であることを知りながら、または容易に知り得る状況であることを知りながら、性交等をした場合。2年以上7年以下の懲役。
・準強制性交等致死傷:準強制性交等の結果、被害者が死亡または負傷した場合。3年以上の懲役。
・強制わいせつ:暴行や脅迫を用いてわいせつな行為をした場合。6か月以上10年以下の懲役。
・強制わいせつ致死傷:強制わいせつの結果、被害者が死亡または負傷した場合。5年以上の懲役。
・準強制わいせつ:被害者が心神喪失や心神耗弱の状態であることを知りながら、または容易に知り得る状況であることを知りながら、わいせつな行為をした場合。6か月以上7年以下の懲役。
・準強制わいせつ致死傷:準強制わいせつの結果、被害者が死亡または負傷した場合。3年以上の懲役。
性暴力と一言で言ってもたくさんの種類の法律があることがわかります。

性暴力に関わる法律は、被害者の権利や利益を保護するために必要なものです。また近年法制度も大きく動いています。
性暴力被害に対する憲法改正の要綱案
2022年2月に公表された刑法改正の要綱案では、性犯罪に関する罪名や要件を見直すことが提案されています。要綱案では、被害者の心身の状態や相手との関係性なども考慮し、具体的な8つの行為を示しています。
その中で3つほど例をあげると、
・被害者が拒否する意思を示しているにもかかわらず、その意思に反して性交等をした場合。
・被害者が拒否する意思を示すことができない状態であることを知りながら、または容易に知り得る状況であることを知りながら、性交等をした場合。
・被害者が拒否する意思を示すことができない状態であることを利用して、性交等をした場合。
などがあります。これらの行為は、暴行や脅迫だけでなく、被害者の意思に反する性的な行為全般に対応できるように設定されています。要綱案では、これらの行為によって被害者が死亡または負傷した場合も罰則の強化が求められています。また、要綱案では、強制わいせつ罪の罪名も「強制性的暴行罪」に変更することも提案されています。

世の中全体で性暴力被害に対する憲法改正・厳罰化の方向に進んでいるといえるでしょう。
実際の性暴力の事例と判決
性暴力事件の逆転有罪1:「魂の殺人」
2019年6月、名古屋地裁岡崎支部は、19歳の娘に対する性的暴行の罪に問われた父親に無罪を言い渡しました。判決では、娘が父親による長年の虐待で精神的に支配されていたことは認めたものの、「抗拒不能」の状態にあったと断定するには疑いが残ると判断しました。この判決に対して、被害者や支援者は「魂の殺人」と激しく抗議しました。その後、名古屋高裁は2020年3月に逆転有罪を言い渡し、懲役10年の刑を科しました。
性暴力事件の逆転有罪2:「被害者責任」や「同意主義」
2017年11月、東京地裁は、女子大生に対する強姦致傷事件で起訴された男性に無罪を言い渡しました 。判決では、女子大生が男性に性行為を拒否したことや暴力を受けたことは認めたものの、「抵抗しきれなかった」という証言に信用性がないと判断しました。この判決に対して、被害者や支援者は「被害者責任」や「同意主義」を批判しました。その後、東京高裁は2019年7月に逆転有罪を言い渡し、懲役5年の刑を科しました。

性暴力の被害に対して、地方裁判所の判断が無罪だったとしても高等裁判所で有罪になるケースがあります。性暴力被害者の声は大きくなってきています。
性暴力の加害者になった場合の行動
自分の行為を認める
性暴力の加害者になってしまった場合、まずは自分の行為を認めることが大切です。自分は何をしたのか、どうしてしたのか、被害者にどんな影響を与えたのか、冷静に考えてみましょう。自分の行為を正当化したり、被害者のせいにしたりすることはやめましょう。
性暴力で警察に逮捕される流れ
性暴力の加害者になってしまった場合、以下のような流れで逮捕される可能性があります。
1.被害者が警察に被害届を提出する。
2.警察が被害者や目撃者などから事情聴取を行い、証拠を集める。
3.警察が検察に逮捕状を請求し、検察が逮捕状を発付する。
4.警察が加害者の自宅や職場などに出向き、逮捕する。
5.警察が加害者を留置場に連行し、取り調べを行う。
6.警察が検察に送検する。
7.検察が加害者に対して起訴するかどうかを判断する。
警察は加害者が逃げないように、事前に逮捕を告知することは少ないです。突然逮捕されるケースが多いといえます。
参照:性的暴行の罪で逮捕!逮捕後の流れ…
弁護士へ相談する大きなメリット
性暴力の加害者になってしまった場合、刑事責任や民事責任について知ることが重要です。刑事責任とは、法律に違反した行為に対して国が罰することで、性暴力事件では強制性交等罪や強制わいせつ罪などが該当します。民事責任とは、他人に損害を与えた行為に対して個人が賠償することで、性暴力事件では慰謝料や医療費などが該当します。刑事責任や民事責任については、専門的な知識が必要なため、弁護士へ相談することがおすすめです。
特に下記のメリットは大きいと言えるでしょう。
・被害者や被害者側の弁護士と交渉したり、示談や和解の方法を提案したりすることができます。これにより、刑事責任や民事責任の軽減や回避の可能性が高まります。
・裁判所や裁判官とも交渉したり、証拠や主張を提出したりすることができます。これにより、刑罰や判決の軽減や有利な結果の獲得の可能性が高まります。
トラスト弁護士法人は、数多くの性暴力にかかわる案件を取り扱ってきました。また初回の無料相談も行っており、24時間体制でお問い合わせを受け付けています。スピーディーに問題を解決できるといえるでしょう。性暴力被害に悩んでいる方はぜひ、トラスト弁護士法人にお問い合わせしてみてください。
今すぐ無料相談する性暴力の被害に遭った場合
被害届や告訴状を提出する
性暴力の被害に遭った場合、加害者に対して刑事責任を追及するためには、被害届や告訴状を提出することが必要です。
被害届とは、警察に事件の事実や加害者の情報を伝える書類で、警察が捜査を開始するきっかけになります。
告訴状とは、検察に事件の事実や加害者の情報を伝える書類で、検察が起訴するかどうかを判断する材料になります。被害届や告訴状は、自分で書くこともできますが、弁護士に依頼するのが安心でしょう。
弁護士へ相談:法的支援や権利救済について知る
性暴力の被害に遭った場合、法的支援や権利救済の方法について知ることで加害者への法的な責任の追求や損害賠償を請求することができます。
法的支援とは、弁護士が被害者の立場で事件の経過や進展を説明したり、被害者の意思や感情を代弁したり、被害者の権利や利益を保護したりすることです。権利救済とは、加害者に対して民事責任を追及することで、慰謝料や医療費などの賠償を求めることです。
民事上の請求については、性暴力・リベンジポルノ案件の経験のある弁護士に頼ることが望ましいです。弁護士に相談することで、性暴力被害者が求める賠償金の適切な金額を判断したり、訴訟手続きを進めるためのアドバイスやサポートを受けることができます。
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今すぐ無料相談するまとめ
性暴力は複雑でデリケートな問題です。
性暴力に関する法的な問題は、個別具体的に判断する必要があります。そのため、性暴力に遭った場合や加害者になってしまった場合は、早急に警察に相談・弁護士に相談することが大切です。弁護士は、性暴力の被害者や加害者の権利や利益を守るために、最善の法的支援を提供してくれます。
弁護士に相談することで、性暴力の問題を解決するための第一歩を踏み出すことができます。性暴力は誰にでも起こりうる問題です。もしもあなたが性暴力の被害者や加害者になってしまったら、恐れずに弁護士に相談してください。加害者と接点を持たない状態で交渉もしてくれるので、安心して相談しましょう。