誹謗中傷に対応した法律として、プロバイダ責任制限法をあげることができます。
2001年11月に制定されたプロバイダ責任制限法は当時、電子掲示板サイトを想定して作られた法律でした。しかし、InstagramやTwitter、Youtubeなどのサービスが多くの人々に普及したことにより誹謗中傷被害が深刻化していきました。これにより、誹謗中傷に対応した法律であるはずのプロバイダ責任制限法は課題となる点が多くなり、時代とともに変化していく誹謗中傷被害に対応することが難しくなりました。
そして2022年10月1日からプロバイダ責任制限法が改正され、誹謗中傷に対して厳格化されることが期待されています。
プロバイダ責任制限法とは?
プロバイダの損害賠償責任と情報開示手続きを明確にした法律
プロバイダ責任制限法は正式には「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律」です。
この法律は特定電気通信による情報の流通(掲示板、SNSの書き込み等)によって権利の侵害があった場合、特定電気通信役務提供者(インターネットプロバイダ、ウェブサイトやサーバの管理・運営者等。以下「プロバイダ」といいます。)の損害賠償責任が免責される要件を明確化するとともに、プロバイダに対する発信者情報の開示を請求する権利、発信者情報開示命令事件に関する裁判手続について定めたものです。
なんだか難しいように感じてしまいますよね。
簡単に言うと、
「プロバイダは顧客の情報を守る立場ではありますが、申立を受けた場合にその責任を免除することができます。権利侵害について認めた場合発信された情報の削除を行う事が可能となり、発信者の情報も申立者に開示することができます。
表現の自由やプライバシー権など、情報発信者には守られるべき権利があります。ですが、プロバイダ責任制限法が範囲とする情報を発信した者に限り、第三者であるプロバイダが介入することができます。」
法律改正で内容はどう変わった?
裁判手続と発信者情報開示部分が改正
今回の改正で、裁判手続と発信者情報開示部分が改正されました。
改正前と改正後を比較してみましょう。
法律内容の改正前
①SNSや掲示板の管理・運営者へ発信者情報開示仮処分命令申立を行う
②サイト運営者から得た情報を基に発信者が使用するプロバイダを特定・発信者情報開示請求訴訟を行う
③発信者による権利侵害が認められた場合、アクセスプロバイダに対して発信者情報開示命令が下される
④損害賠償請求の場合、民事裁判での訴訟を行う必要がある
①、②は裁判手続となるため最低でも2回、損害賠償を請求する場合3回もの裁判手続を行わなければなりません。手続きを行うために多くの時間がかかるため、IPアドレスの保存期間が経過してしまい発信者を特定できなくなることも。
法律内容の改正後
改正前は発信者を特定するまでに訴訟を必要としましたが、改正後は訴訟をせずに発信者を特定することができるようになりました。この手続を開示命令手続と呼びます。
①SNSや掲示板サイトの運営者へ発信者情報開示命令と使用しているアクセスプロバイダの名称について提供命令申立を行う
②アクセスプロバイダへ発信者情報開示命令申立を行い、SNS・掲示板サイトの運営は自身が有する発信者情報をアクセスプロバイダへ提供する必要がある
③発信者情報開示命令の申立が認められるとSNS・掲示板サイトの運営とアクセスプロバイダから情報が開示される
裁判手続をせずに簡易的にしているため、改正前の発信者情報開示手続に比べて開示されるまでの時間が短くなります。しかし、開示命令手続ではサイト運営者やアクセスプロバイダは異議を申し立てることができるため、訴訟に移行する可能性があります。
法律改正の目的
事案の性質が様々で対応に迫られたため
開示命令手続は権利侵害性が明らかな事案や当事者同士の対立性が高くない事案があることを踏まえ、裁判の審理を簡易的に、迅速に行うことができるようにするために改正されました。
しかし、サイト運営者やアクセスプロバイダが対立する姿勢を示し訴訟に移行した場合、審理期間が長期化する可能性があります。したがって、法律改正前から使用されていた発信者情報開示請求訴訟と改正後に創設された開示命令手続の2つの方法を選択することができます。
SNSに弱い法律内容だったため改正
改正前の内容ではSNSでの権利侵害に対して弱い法律であったと言えます。
発信者情報を開示するためにはIPアドレスと呼ばれるインターネットと接続されている機器(スマートフォンやPC)に割り振られている番号を特定しなければなりません。IPアドレスを特定することで発信者の名前や住所などの個人情報を開示することができます。しかし、IPアドレスは保存期間が経過すると消去されてしまう仕組みに加えて、SNSのIPアドレスは権利侵害の対象となる投稿からIPアドレスを開示することができません。
法律改正により審理期間中のIPアドレスの消去を防ぐ消去禁止命令の申し立てが可能となり、SNSのIPアドレスをアカウントにログインした際の情報から開示することが可能になりました。
まとめ
法律の内容が変わり、誹謗中傷を受ける被害者の権利がより強くなったと考えることができるでしょう。
実際に被害を受けている人にとっては、嬉しい法改正の内容かもしれませんね。
ただ、開示請求等の手続きは一人でやると大変で時間もかかります。
トラスト弁護士法人はSNS・デジタル犯罪に強く、誹謗中傷の案件を数多く取り扱っています。
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