現在、盗撮などは各都道府県の迷惑防止条例によって処罰されていますが、条例によって刑罰の内容や対象となる行為が異なるという問題がありました。そこで、2023年6月に国会で可決された法案により、刑法に新たに撮影罪が設けられることになりました。
この記事では
✓撮影罪がいつから施行されるのか
✓どんな行為が違法となるのか
✓どんな刑罰が科せられるのか
など、撮影罪についてわかりやすく解説します。盗撮被害者の人権やプライバシーを守るためにも、撮影罪の内容を知っておきましょう。
撮影罪の定義と生まれた背景
2023年6月16日、国会で「性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律」が可決・成立し、刑法に撮影罪が設けられることになりました 。
現在、隠し撮りなどは各都道府県の迷惑防止条例によって処罰されていますが、条例によって刑罰の内容や対象となる行為が異なるという問題がありました。そこで、スマートフォンの普及によって隠し撮り件数が年々増加していく中、隠し撮りなどの撮影行為を全国一律で処罰する規定の新設や重罰化などが求められており、今回、撮影罪が新設されることになりました。
撮影罪はいつから施行?罰則も解説
撮影罪が違法とする撮影行為の具体的な内容や条件
撮影罪が違法とする撮影行為は、次の3つの要件を満たす場合です。
1.正当な理由がないこと
医療や教育などの目的で性的姿態を撮影する場合は正当な理由があるとみなされます。
2.ひそかに撮影すること
被写体が気づかないように隠しカメラやスマートフォンで撮影する場合はひそかに撮影するとみなされます。
3.性的姿態等を撮影すること:性的姿態等とは、次の3つを指します。
・性器や臀部、胸部などの性的な体の部位
スカートの中や胸元を盗撮する場合は性的な体の部位を撮影するとみなされます。
・性的な部位を隠すために着用している下着
下着姿や水着姿を盗撮する場合は下着を撮影するとみなされます。
・わいせつな行為や性交等がされている間の人の姿態
ホテルや自宅で性交中の様子を隠れて撮影する場合はわいせつな行為や性交等を撮影するとみなされます。
これらの要件を満たす場合に撮影罪は違法になります。
撮影罪による刑罰の種類や量刑、過去の判例
撮影罪を犯して性的姿態等の撮影を行った場合、法定刑は「3年以下の拘禁刑 又は 300万円以下の罰金」となります。
撮影罪の新設によって、盗撮や隠し撮りなどの撮影行為が厳罰化されます。
現在、盗撮などは各都道府県の迷惑防止条例で処罰されていますが、刑法には盗撮等を処罰する規定がありません。
東京都迷惑防止条例では、通常衣服で隠れている下着や身体を撮影する行為は、1年以下の懲役か100万円以下の罰金という刑罰が定められています。
撮影罪による刑罰の変更点 | 新設 | 現行法令 |
---|---|---|
罪名 | 撮影罪 | 迷惑防止条例違反 |
刑罰 | 3年以下の拘禁刑 又は 300万円以下の罰金 | 1年以下の懲役又は100万円以下の罰金 |
備考 | 非常習、東京都の場合 | 非常習、東京都の場合 |
拘禁刑とは、改正刑法で新たに設けられる、新しい刑の種類です。
「懲役」と「禁錮」という自由刑を統合して新しく作られることになりました。
撮影罪が施行される時期や過渡期間、既存法令との関係
撮影罪は2023年内の公布・施行が見込まれています。
国会で2023年6月16日に可決・成立した「性的な姿態を撮影する行為等(中略)に関する法律」は、撮影罪を規定する法律ですが、いつ公布・施行されるのかはまだ決まっていません。
この法律は、公布の日から20日後に施行されることになっています。
撮影罪が施行された後も、既存の迷惑防止条例は存続します。しかし迷惑防止条例で処罰されるべき事案が撮影罪で処罰される場合は、迷惑防止条例で処分しないこととなっています。つまり、同じ事案に対して二重に処分することはありません。
また、撮影罪が施行される前に起きた事案についても、一定期間内であれば撮影罪で処分することができます。具体的には、次の2つの条件を満たす場合です。
・撮影罪が施行される前の3年以内に撮影行為が行われたこと
撮影罪が2023年12月1日に施行されたとすると、2020年12月1日以降に撮影行為が行われた場合は撮影罪で処分できます。
・撮影罪が施行される前の1年以内に被害者が告訴したこと
撮影罪が2023年12月1日に施行されたとすると、2022年12月1日以降に被害者が告訴した場合は撮影罪で処分できます。
撮影罪で処罰される主なケース
撮影罪が適用される可能性が高いケース
撮影罪が適用される可能性が高いケースは、次のような事例です。
電車内や駅構内で女性のスカートの中や胸元を盗撮するケース
女性の性的な体の部位や下着をひそかに撮影するので、正当な理由もなく、性的姿態等を撮影することになります。
ホテルや自宅で性交中の様子を隠れて撮影するケース
相手方の同意なく、わいせつな行為や性交等をひそかに撮影するので、正当な理由もなく、性的姿態等を撮影することになります。
水着姿や下着姿の写真をSNSに投稿するケース
相手方の同意なく、下着や水着をひそかに撮影し、第三者に提供するので、正当な理由もなく、性的姿態等を撮影し、提供することになります。
撮影罪が適用されない可能性が高いケース
撮影罪が適用されない可能性が高いケースは、次のようなケースです。
医療や教育目的で性的姿態を撮影するケース
医療や教育目的であれば、正当な理由があるとみなされます。ただし、必要以上に詳細な画像を撮ったり、第三者に提供したりする場合は別途問題になる可能性があります。
被写体が自ら同意して性的姿態を撮影するケース
被写体が自ら同意していれば、ひそかに撮影することにはなりません。ただし、同意した後に画像を無断で第三者に提供したりする場合は別途問題になる可能性があります。
顔や手足などの非性的な部位を撮影するケース
顔や手足などは性的姿態等には含まれません。ただし、性的な意図があって撮影したり、第三者に提供したりする場合は別途問題になる可能性があります。
撮影罪の適用について曖昧なケースや議論の余地があるケース
撮影罪の適用について曖昧なケースや議論の余地があるケースは、次のような事例です。
芸能人やスポーツ選手などの水着姿や下着姿を雑誌やテレビで撮影するケース
被写体が自ら同意していれば、ひそかに撮影することにはなりませんが、被写体の同意の範囲や内容によっては問題になる可能性があります。また、被写体が未成年であれば、児童ポルノ法などの他の法律に抵触する可能性もあります。
ヌードモデルやアダルトビデオ出演者などの性的姿態を撮影するケース
被写体が自ら同意していれば、ひそかに撮影することにはなりませんが、被写体の同意の範囲や内容によっては問題になる可能性があります。また、被写体が未成年であれば、児童ポルノ法などの他の法律に抵触する可能性もあります。
盗撮された画像をインターネット上で見つけて保存するケース
盗撮された画像を第三者に提供する場合は提供罪に該当しますが、自分だけで見る目的で保存する場合は記録罪に該当しないという見解もあります。しかし、盗撮された画像だと認識した上で保存することは、被害者の人権を侵害する行為であり、道義的にも問題があると言えます。
まとめ:撮影罪の新設で盗撮は厳罰化される
この記事では、撮影罪とは何か、違法となる行為や刑罰、施行時期や注意点などについて解説しました。
撮影罪は2023年内に施行される予定で、盗撮や隠し撮りなどの撮影行為がより厳しく処罰されることになります。また、盗撮画像を第三者に提供したり、保管したりする行為も処罰されます。
撮影罪の新設は、盗撮被害者の人権やプライバシーを守るための重要な一歩です。しかし、まだまだ改善すべき点も多くあります。公訴時効の見直しや児童ポルノ法の改正など、さらなる法改正が必要です。
また、法律だけでは被害を防ぐことはできません。社会全体で盗撮や隠し撮りなどの撮影行為を許さない風潮を作っていくことが大切です。
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