インターネットやSNSの普及によって、風評被害は簡単に拡散され、深刻な影響を及ぼすことがあります。風評被害は、法律でどのように規制されているのでしょうか?また、風評被害の加害者や被害者になった場合、どのように対処すべきなのでしょうか?
この記事では、風評被害に関する法律や時効、逮捕の可能性などを解説します。
風評被害について

ここでは風評被害の定義と風評被害をとりまく近年の状況について解説します。
風評被害の定義
風評被害とは、事実と異なる噂や誹謗中傷によって、人や物の評判や価値が損なわれることをいいます。風評被害は、名誉毀損や信用毀損という刑法上の犯罪に当たる場合があります。
名誉毀損とは、特定の人物を中傷してその名誉を傷つけることで、信用毀損とは、特定の人物や団体の信用を毀損することです。風評被害は、これらの犯罪に加えて、不法行為という民法上の責任も発生させます。不法行為とは、他人の権利や利益を侵害する行為で、損害賠償請求の対象になります。
風評被害を取り巻く近年の状況
風評被害は、社会的な信頼や経済的な損失をもたらすだけでなく、人の尊厳や心理的な安全をも侵害する重大な問題です。特に、インターネットやSNSの普及によって、風評被害の発生源や拡散力が増しています。
近年の風評被害を取り巻くニュースを、3つを挙げてみます。
インフルエンサーがPR案件で失敗し炎上~企業への風評被害
インフルエンサーとは、SNSなどで多くのフォロワーを持ち、自身の意見や体験を発信する人のことです。インフルエンサーは、企業から商品やサービスのPR案件を受けることがありますが、その際に不適切な発言や行動をしてしまい、批判や炎上を招くことがあります。例えば、豊胸手術を隠してバストアップ商材を宣伝したYouTuberや、生活保護受給者に対して差別的な発言をしたインスタグラマーなどがあります。このようなインフルエンサーの失敗は、自身の信用や収入に影響するだけでなく、PR案件を依頼した企業にも風評被害を与える可能性があります。
参照:起用タレントの炎上
起用タレントの炎上による企業への風評被害
起用タレントとは、企業が広告やマーケティング活動で起用する芸能人や著名人のことです。起用タレントは、企業のブランドイメージや商品の魅力を高める役割を果たしますが、その一方で、自身の言動によって炎上するリスクも抱えています。例えば、セクハラ行為を告発された評論家やジェンダーに関する過激な発言をした弁護士などがあります。このような起用タレントの炎上は、企業にも批判や不買運動などの風評被害をもたらすことがあります。
福島産の農水産物に対する風評被害
2011年の東日本大震災と福島第一原発事故以降、福島県産の農水産物は放射性物質の影響を受けているという風評被害に苦しんでいます。しかし、政府や県は厳しい検査基準を設けて、安全なものだけが流通されるようにしています。それでも、消費者の不安や海外からの輸入制限などが続き、生産者や漁業者は販路や価格の回復に苦労しています。福島県産の農水産物は安全でおいしいことを広く知ってもらうために、PR活動やイベントなども行われています。
参照:朝日新聞

風評被害はSNSやインターネットが出来てから増えてきています。また、企業だけでなく個人の風評被害も増えているため、個人にとっても風評被害に関わる法律は知っておくべきだと言えるでしょう。
風評被害に関わる法律は?種類と罰則について

どのような罰則・事例があるのでしょうか?
風評被害に関わる法律の種類と罰則・事例
風評被害を引き起こした場合、以下のような刑法上の罪に問われる可能性があります。
・名誉毀損罪(刑法230条):事実であるかどうかに関係なく、特定の人物や法人の社会的評価を低下させる内容を公然と伝えた場合。3年以下の懲役または50万円以下の罰金。
・侮辱罪(刑法231条):具体的な事実を示さずに、誰かを侮辱した場合。拘留または科料。
・信用毀損罪(刑法233条):真実ではない情報を不特定多数の人に広めて、人の信用を低下させた場合。3年以下の懲役または50万円以下の罰金。
・業務妨害罪(刑法233条・234条):偽計や威力を用いて、他人の業務(商売や事業)を妨害した場合。3年以下の懲役または50万円以下の罰金。
これらの罪は、被害者が告訴しなければ起訴されません。また、告訴するには加害者を特定する必要がありますが、インターネット上では匿名で投稿できるため、発信者情報開示請求などの手続きが必要です。
風評被害に関する法律の時効について

被害者になってしまった場合、時効でどうるのか解説します。
風評被害の時効
風評被害に対しては、民事的に損害賠償や謝罪を求めることができますが、その権利は無期限ではありません。民法では、不法行為による損害賠償請求権は、次の2つの時効があります。
不法行為があった日から20年
損害と加害者を知った日から3年
このうち、短い方が適用されます。つまり、風評被害を受けた場合は、その日から20年以内かつ損害と加害者を知った日から3年以内に訴えを起こさなければなりません。この期間を過ぎると、時効が成立して損害賠償請求権が消滅します。
ただし、「損害と加害者を知った日」というのは必ずしも明確ではありません。例えば、インターネット上での書き込みによる風評被害の場合、書き込みをした投稿者の住所氏名を開示してもらうまでは、「加害者に対する賠償請求」は通常不可能です。そのため、投稿者の住所氏名を開示してもらった日が「損害と加害者を知った日」となる可能性があります。
風評被害の時効と損害賠償・慰謝料
損害賠償請求の時効は、一般的には、被害者またはその法定代理人が損害および加害者を知ったときから3年間です。ただし、不法行為の時から20年間を経過したときも時効が成立します。
時効にならないためには、時効の期間内に、加害者や保険会社に対して損害賠償請求の存在を認めさせることで、時効を中断させる必要があります。
風評被害の時効を中断させるには?
時効を中断させる方法としては、以下のようなものがあります。
・訴訟を起こすこと
・加害者に示談金の一部を仮払いしてもらうこと
・保険会社から仮渡金をもらうこと
・債務者へ催告すること
これらの方法で時効を中断させると、その時点から再び時効のカウントが最初から始まります。ただし、催告する場合は、日本と違って裁判上の請求等をする必要はありませんが、催告書の内容や送付方法に注意が必要です。
また、仮払いや仮渡金を受け取る場合は、必ず念書を取って、今回の支払いが仮払いであり、今後も交渉を継続し賠償を行うことを明確にすることが望ましいです
自分が 風評被害に遭った時にできる対応は様々ありますが、早急に証拠を保存し、弁護士に相談することが望ましいといえるでしょう。
風評被害に悩んでいる方は、デジタル犯罪を多く取り扱い実績がある弁護士に相談するのがおすすめです。
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風評被害に対して被害者が取れる行動
被害者が取れる行動としては、主に以下の3つがあります。
・発信停止、削除等の請求
・損害賠償請求
・刑事告訴
発信停止、削除等の請求とは、風評被害を受けていることがわかったときに、速やかに当該情報の発信停止や削除などを求めていくことです。これは、風評被害の拡散を防ぐために重要な対処法です。
損害賠償請求とは、風評被害によって経済的な損害を受けた場合に、加害者に対して損害の補償を求めることです。損害賠償の内容は、精神的な損害に対する慰謝料、犯人特定に要した弁護士費用である調査費用、損害賠償のための弁護士費用などがあります。
刑事告訴とは、風評被害が名誉毀損や業務妨害などの刑法上の犯罪に当たる場合に、加害者を刑事責任に問うために警察や検察に告訴することです。刑事告訴は、加害者への抑止力や社会的非難を与える効果がありますが、告訴したからといって必ず捜査や起訴が行われるわけではありません。
これらの行動は、時効の問題があります。時効とは、一定期間内に行動しなければ権利を失うという制度です。風評被害に関する時効は以下の通りです。
・発信停止、削除等の請求:不法行為から3年
・損害賠償請求:不法行為から3年
・刑事告訴:名誉毀損は公表から6ヶ月、業務妨害は犯行から3年
したがって、風評被害を受けた場合は、時効が成立する前に上記の行動を取る必要があります。
ただ前章で書いたように、必ずしも時効が適用されるわけではありません。
「被害を受けたがどう対応したらいいのか分からない」そんな場合は、弁護士への相談をおすすめします。
風評被害で弁護士へ相談するメリット
弁護士に相談するメリットとしては、以下のようなものがあります。
・風評被害を最小限に抑えることができる
・違法行為への対抗手続きを適切かつスムーズに行える
・警察への相談のタイミングもアドバイス
・弁護士費用は加害者への請求も可能
・弁護士は風評被害の専門家であり、最新の判例や法改正にも精通している
・弁護士は守秘義務があり、相談内容を第三者に漏らさない
また、法律の時効に関して悩んでいる部分があったとしても、弁護士に相談する際は下記のようなメリットがあります。
・弁護士は時効の期間や起算点を正確に把握しており、時効が成立する前に必要な行動をとることができる
・弁護士は時効の中断や更新の方法を知っており、時効の期間を延長することができる
・弁護士は時効の援用や放棄の効果を理解しており、時効に関するトラブルを回避することができる
もし風評被害を受けた際はデジタル犯罪・SNSのトラブルに強い弁護士に相談することをおすすめします。
トラスト弁護士法人はSNS上のデジタル犯罪やトラブルに強く、数多くの風評被害にかかわる案件を解決してきました。また初回の無料相談も行っており、24時間体制でお問い合わせを受け付けているため、スピーディーに問題を解決できるでしょう。風評被害に悩んでいる方はぜひ、トラスト弁護士法人にお問い合わせしてみてください。
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加害者ができる行動:投稿を削除
・自分の書き込みが違法かどうかを判断し、問題があると思われる場合は、速やかに削除することです。ただし、匿名掲示板や口コミサイトなどでは、削除ができない場合や管理者が拒否する場合もあります。
・次に、風評被害の被害者から送信防止措置依頼書や侵害情報の通知書兼送信防止措置に関する照会書などが届いた場合は、7日以内(リベンジポルノ被害の場合は2日)に回答することです。回答は、自分の書き込みが違法か否かによって異なりますが、同意しなかったからといって不利益を被ることはありません。
・さらに、風評被害の被害者から損害賠償請求や刑事告訴などの法的手段を取られた場合は、弁護士に相談し、適切な対応を行いましょう。
示談交渉や裁判などのプロセスでは、弁護士のアドバイスや代理が必要になる場合が多いです。
弁護士に相談するメリット
弁護士に相談するメリットは以下のようなものがあります。
・弁護士は、発信者の情報開示請求や削除要請などの法的手続きを代行してくれます。これにより、発信者を特定したり、書き込みを削除したりすることができます。
・弁護士は、発信者に対して損害賠償や慰謝料の請求を行うことができます。これにより、風評被害による経済的な損失や精神的な苦痛を補償してもらうことができます。
・弁護士は、ネット上の風評被害対策に関する専門知識や経験を持っています。これにより、迅速かつ効果的な対策を提案してくれます。
トラスト弁護士法人はSNS上のデジタル犯罪やトラブルに強く、数多くの性暴力にかかわる案件を解決してきました。また初回の無料相談も行っており、24時間体制でお問い合わせを受け付けているため、スピーディーに問題を解決できるでしょう。性暴力被害に悩んでいる方はぜひ、トラスト弁護士法人にお問い合わせしてみてください。
今すぐ無料相談するまとめ
この記事では風評被害に関する法律の時効や、加害者・被害者がとれる対処法を紹介しました。被害者・加害者のどちらにとっても弁護士への相談がメリットになるケースが多いでしょう。
もし個人で風評被害の加害者・被害者になった場合、どのような対策を取ればよいかは下記の記事を参考にしてください。
風評被害で個人ができる対策!実際の事例と注意点を含め、防ぐ方法も解説