回転ずしチェーン「スシロー」で客が寿司に唾液をつけるなどの迷惑行為をした動画がSNS上に拡散された問題で、スシローの運営会社は、男性に約6700万円の損害賠償を求める訴えを起こしています。もし賠償金が払えない場合はどうなるのでしょうか?また、過去に巨額の賠償金が請求された事例はあるのでしょうか?
法律的な観点からも解説します。
スシローペロペロ事件の流れまとめ
回転ずしチェーン「スシロー」の店内で、客がしょうゆさしをなめたり、レーン上の寿司に唾液をつけたりする迷惑行為をした動画がSNS上に拡散された問題で、スシローの運営会社は、迷惑行為をした岐阜県内の男性に約6700万円の損害賠償を求める訴えを大阪地裁に起こしました。
この事件は、今年1月に発生し、動画はインターネット・SNS上で大きな反響を呼びました。スシロー側は、動画の拡散により全国で客が大幅に減り、親会社の株価も急落し、160億円以上の損失があったと主張している。迷惑行為が「多くの客に著しい不快感や嫌悪感を与えた」とした上で、男性に対して、衛生管理の信用が損なわれた被害など、6700万円余りの賠償を求めています。
一方、男性側は先月、迷惑行為をおおむね認めて反省しているとした上で「業界は競争が激しく、客の減少は同業のほかの店舗と競合していることも考えられる」などとして、争う姿勢を示しています。
このように、企業から個人に対する損害賠償請求は、高額になることが多い。しかし、個人がその賠償金を払えない場合はどうなるのでしょうか?
損害賠償を払えない場合
損害賠償請求は民事訴訟であるため、判決が確定しても強制執行されるわけではありません。個人が賠償金を払えない場合は、企業側が強制執行手続きを行う必要があります。
強制執行手続きとは、裁判所に申し立てて債務者の財産(不動産や預金など)を差し押さえて売却し、その代金から賠償金を回収する方法です。ただし、強制執行手続きには費用や時間がかかりますし、債務者の財産が見つからない場合や価値が低い場合は回収できない可能性もあります。
スシローペロペロ事件と類似の事件のケース
では、他の企業ではどういう対応をしているのでしょうか。過去の類似の事例を調べました。
・2019年、東京都内の回転ずしチェーン「かっぱ寿司」の店内で、客が寿司を口に入れて吐き出すなどの迷惑行為をした動画がSNS上に拡散された問題で、かっぱ寿司の運営会社は、迷惑行為をした東京都内の男性に約3000万円の損害賠償を求める訴えを東京地裁に起こした。判決はまだ出ていない。
・2018年、大阪府内の回転ずしチェーン「くら寿司」の店内で、客が寿司にわさびを大量に盛り付けるなどの迷惑行為をした動画がSNS上に拡散された問題で、くら寿司の運営会社は、迷惑行為をした大阪府内の男性に約1000万円の損害賠償を求める訴えを大阪地裁に起こした。判決では、男性に約200万円の支払いを命じた。
・2017年、東京都内の回転ずしチェーン「スシロー」の店内で、客が寿司に唾液をつけるなどの迷惑行為をした動画がSNS上に拡散された問題で、スシローの運営会社は、迷惑行為をした東京都内の男性に約1000万円の損害賠償を求める訴えを東京地裁に起こした。判決では、男性に約300万円の支払いを命じた。
・2016年、愛知県内の回転ずしチェーン「はま寿司」の店内で、客が寿司や皿などを投げるなどの迷惑行為をした動画がSNS上に拡散された問題で、はま寿司の運営会社は、迷惑行為をした愛知県内の男性に約500万円の損害賠償を求める訴えを名古屋地裁に起こした。判決では、男性に約100万円の支払いを命じた。
これらの事例からわかるように、企業から個人に対する損害賠償請求は高額になりますが、判決ではその一部しか支払いが命じられないことが多いようです。また、判決が出ても債務者が賠償金を払えない場合は強制執行手続きが必要となりますが、その際にも財産が見つからなかったり価値が低かったりすると回収できないこともあります。そのため、企業側は慎重な判断と準備が必要です。
まとめ
この記事ではスシローペロペロ事件について、損害賠償の金額が払えなかった場合はどういった法的対応になるのか、ほかの会社等の類似の事例についてまとめました。
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