虐待は、身体的・性的・心理的な暴力や育児放棄など、人の尊厳や権利を著しく侵害する行為です。しかし虐待の被害者は、恐怖や恥ずかしさ、家庭の崩壊を恐れるなどの理由で、なかなか声を上げられません。
虐待によって成立する犯罪にはそれぞれ刑事上の時効が定められていますが、被害者が訴える前に時効が成立してしまうと、加害者は罪に問われません。
虐待の時効はいつから始まり、いつまで続くのでしょうか?また、加害者や被害者になった場合にはどうすればいいのでしょうか?
この記事では、虐待における時効の仕組みや実際の事例を紹介し、法的な対応や支援策について解説します。
虐待の定義や近年のニュース
虐待の定義
虐待とは、人の身体や心に対して暴力や脅迫、無視や侮辱などの不当な行為を繰り返し行うことです。虐待は、家庭内や職場、学校、施設などさまざまな場所で起こり得ます。虐待は、加害者と被害者の関係性や状況によって、さまざまな形で表れます。虐待は、被害者の人格や尊厳を傷つけるだけでなく、身体的・精神的・社会的な健康にも深刻な影響を及ぼします。
虐待に関する最近のニュース
介護施設職員などが高齢者虐待 昨年度739件 過去最多 厚労省
高齢者が介護施設の職員やホームヘルパーなどから受けた虐待の数が、昨年度739件と、統計をとり始めてから最も多くなったことが分かりました。相談・通報の件数もこれまでで最も多い2390件となっています。
虐待が起きた要因としては、「教育・知識・介護技術などに関する問題」が最も多く56%、「職員のストレスや感情コントロールの問題」が23%、「組織風土や職員間の関係の悪さ、管理体制など」が22%となっています。また、過去にも虐待が確認された施設や事業所がおよそ2割にあたる146件あったことから、再発防止に向けた取り組みが課題となっています。
参照:介護施設職員などが高齢者虐待 昨年度739件 過去最多 厚労省
死亡の5歳、ノートに「おねがいゆるして」両親虐待容疑
東京都目黒区で虐待を受けたとされる船戸結愛ちゃん(5)が3月に死亡した事件で、父親と母親が保護責任者遺棄致死の容疑で逮捕されました。結愛ちゃんは死亡時に全身にあざや骨折などの外傷があり、体重も11キロ以下と極度の栄養不良だったということです。結愛ちゃんは自分のノートに「おねがいゆるして」等書いていたようです。

虐待のニュースは日々起こっていますが、虐待の種類や罰則について紹介します。
虐待に関わる法律は?種類と罰則について

虐待に関わる法律の種類と罰則・事例
虐待に関わる法律は、虐待の対象や場所、内容によって異なります。代表的なものを以下に示します。
・児童虐待防止法
児童(18歳未満)に対する身体的・精神的・性的な虐待や、保護者の監督不行屍などを禁止する法律です。虐待を行った者は、児童福祉法に基づき児童相談所から保護命令や指導命令を受けることがあります。違反者には1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科されます。
また、刑法上の犯罪(傷害罪、暴行罪、強制わいせつ罪など)に該当する場合は、刑事責任も問われます。例えば、船戸結愛ちゃんの事件では、両親が保護責任者遺棄致死の容疑で逮捕されました。
・障害者虐待防止法
障害者(身体的・知的・精神的な障害がある人)に対する身体的・精神的・性的な虐待や、保護者や施設職員などの監督不行屍などを禁止する法律です。虐待を行った者は、障害者総合支援法に基づき市町村から保護命令や指導命令を受けることがあります。
罰則としては、「障害者福祉施設従事者等が、障害者虐待を受けたと思われる障害者を発見した場合には、速やかに都道府県知事に通報しなければならないとされていますが、これを怠った場合には、30万円以下の罰金に処せられる」といったものが挙げられます。
また、刑法上の犯罪(傷害罪、暴行罪、強制わいせつ罪など)に該当する場合は、刑事責任も問われます。例えば、福岡県の障害者施設で元施設長が利用者に性的虐待をした事件では、民事訴訟で賠償命令が出されました。
・高齢者虐待防止法
高齢者(65歳以上)に対する身体的・精神的・性的な虐待や、保護者や施設職員などの監督不行屍などを禁止する法律です。虐待を行った者は、介護保険法に基づき市町村から保護命令や指導命令を受けることがあります。また、刑法上の犯罪(傷害罪、暴行罪、強制わいせつ罪など)に該当する場合は、刑事責任も問われます。例えば、神奈川県の介護施設で職員が利用者を平手打ちしたり下半身の動画を撮影したりする虐待があった事件では、県が監査を行っています。
・リベンジポルノ防止法:恋人や配偶者などとの関係が終了した後に、相手の裸や性的な行為を撮影した画像や動画をインターネット上に公開したり、脅迫したりする行為を禁止する法律です。虐待を行った者は、3年以下の懲役または50万円以下の罰金に処せられます。例えば、元交際相手の女性の裸の写真をツイッターに投稿した男性が逮捕された事件があります。

虐待は大きく3つ法律がありますが、実際に時効はどのくらいなのでしょうか?
虐待に関する法律の時効について

虐待に関する法律と時効
虐待に関する法律の時効は、虐待がどのような犯罪にあたるかによって異なります。虐待は刑法に規定された犯罪に該当する可能性がありますが、一般的には以下のような犯罪が考えられます。
・暴行罪:人の身体に向けた有形力の行使をすること。刑罰は2年以下の懲役もしくは30万円以下の罰金。公訴時効は3年。
・傷害罪:人の生理的機能に障害を与えること。刑罰は15年以下の懲役または50万円以下の罰金。公訴時効は10年。
・強要罪:生命、身体、自由、財産、名誉に害悪を加える旨を告知して脅迫し、または暴行を用いて、義務のないことをさせ、または権利の行使を妨害すること。刑罰は3年以下の懲役。公訴時効は3年。
・強制わいせつ罪:13歳以上の者に対して、暴行・脅迫を用いてわいせつな行為をすること。刑罰は6か月以上10年以下の懲役。公訴時効は7年。
・監護者わいせつ罪:18歳未満の者に対し、監護者であることの影響力を用いてわいせつな行為をすること。刑罰は6か月以上10年以下の懲役。公訴時効は7年。
以上のように、虐待に関する法律の時効は犯罪ごとに定められていますが、これらは一般的な場合であり、個別の事情や法改正などによって変わる可能性があります。また、民事上の時効もありますが、これは被害者が加害者から損害賠償を請求できる期間を示すものであり、一般的には3年です。
虐待に関する法律の時効について詳しく知りたい場合や、自分や他人が虐待を受けた場合などは、弁護士や相談機関に相談することをおすすめします。

被害を受けて時間が経っていても対処法があるかもしれないので、弁護士に相談してみましょう。
虐待の被害で時効になった事例

虐待の公訴時効は成立していたが慰謝料を勝ち取った事例
3歳から10歳まで母親の交際相手だった男に性的虐待を受けたという女性が、成人後に被害を警察に届け出たケースです。男は児童福祉法違反(淫行)の罪で起訴されましたが、弁護側は犯行日を特定できておらず、女性の記憶があいまいだと主張し、起訴時点で時効が成立しているとして免訴を求めました。東京地裁は2018年12月に判決を言い渡し、男に懲役3年6か月の実刑判決を下しました。弁護側は控訴しましたが、東京高裁は2019年11月に一審判決を支持しました。
参照:虐待に時効はあるの? 過去の虐待で訴えられた場合に問われる罪とは
性的虐待を受け、公訴時効が成立するも…
4歳から14歳まで父親から性的虐待を受けたという女性が、成人後に被害を警察に届け出たケース。父親は監護者わいせつ罪や強制わいせつ罪などで逮捕されましたが、公訴時効が成立していることから不起訴処分となりました。女性は民事訴訟を起こし、父親から慰謝料を勝ち取りました。
虐待の加害者になってしまった場合はどうすればいい?

逮捕の可能性はどれくらい
虐待の加害者になってしまった場合、逮捕される可能性は高いと言えます。虐待は刑法上の犯罪(傷害罪、暴行罪、強制わいせつ罪など)に該当する場合が多く、被害者や目撃者から警察に通報されれば捜査が始まります。また、虐待防止法では、虐待を目撃した職員や施設長などは市町村に通報する義務があります。市町村は通報を受けて保護命令や指導命令を出すことができますが、必要と判断すれば警察に連絡することもできます。
弁護士へ相談するメリット
虐待の加害者になってしまった場合、弁護士に相談することが非常に重要です。弁護士に相談することで、以下のようなメリットがあります。
・虐待の種類や程度、被害者の状況や訴えの内容などに応じて、適切な法的対応をアドバイスしてくれます。虐待は刑事事件に発展する可能性がありますが、弁護士は刑事手続きの流れや注意点を説明し、被疑者・被告人としての権利や義務を守ってくれます。
弁
・虐待をした理由や背景、心理状態などを聞いてくれます。虐待をした人は、介護疲れやストレス、経済的困窮などさまざまな問題を抱えている場合が多いですが、弁護士はそのような事情を考慮してくれます。また、弁護士は、虐待をしないようにするための支援や相談機関を紹介してくれる場合もあります。
・被害者や児童相談所、家庭裁判所などとの話し合いに同席してくれます。虐待の加害者と被害者との間には感情的な対立や不信感が生じることがありますが、弁護士は中立的な立場から話し合いを円滑に進めることができます。また、弁護士は法的な知識や技術を持っているため、話し合いの結果や内容を正確に記録したり、書面化したりすることができます。・
・相談内容や事件の秘密を厳守します。虐待は恥ずかしいことだと思って相談しづらい人もいるかもしれませんが、弁護士は法律上の義務として秘密保持をしなければなりません。弁護士に相談すれば安心して本音を話すことができます。
トラスト弁護士法人は虐待関係のトラブルに強く、数多くの案件を解決してきました。また初回の無料相談も行っており、24時間体制でお問い合わせを受け付けているため、スピーディーに問題を解決できるでしょう。虐待被害に悩んでいる方はぜひ、トラスト弁護士法人にお問い合わせしてみてください。
今すぐ弁護士に無料相談する虐待の被害にあった場合に時効になったらどうすればいい?

被害者ができる行動:相談に行く
虐待の被害にあった場合、まずできる行動は、虐待から逃れることです。虐待は、被害者の身体や心に深刻なダメージを与えます。虐待から逃れることで、被害者は自分の安全や健康を守ることができます。虐待から逃れる方法は、虐待の場所や状況によって異なりますが、例えば、家庭内での虐待ならば、児童相談所や女性相談所などの保護施設に避難することができます。職場や学校での虐待ならば、上司や教師などの信頼できる人に相談することができます。施設での虐待ならば、市町村や警察などの公的機関に通報することができます。
弁護士へ相談するメリット
・虐待の種類や程度、加害者の状況や訴えの内容などに応じて、適切な法的対応をアドバイスしてくれます。虐待は刑事事件に発展する可能性がありますが、弁護士は刑事手続きの流れや注意点を説明し、被害者・告訴人としての権利や義務を守ってくれます。
・虐待を受けた理由や背景、心理状態などを聞いてくれます。虐待を受けた人は、トラウマや恐怖、自己責任感などさまざまな問題を抱えている場合が多いですが、弁護士はそのような事情を考慮してくれます。また、弁護士は、虐待から回復するための支援や相談機関を紹介してくれる場合もあります。
・弁護士は、加害者や児童相談所、家庭裁判所などとの話し合いに同席してくれます。虐待の被害者と加害者との間には感情的な対立や不信感が生じることがありますが、弁護士は中立的な立場から話し合いを円滑に進めることができます。また、弁護士は法的な知識や技術を持っているため、話し合いの結果や内容を正確に記録したり、書面化したりすることができます。
・相談内容や事件の秘密を厳守します。虐待は恥ずかしいことだと思って相談しづらい人もいるかもしれませんが、弁護士は法律上の義務として秘密保持をしなければなりません。弁護士に相談すれば安心して本音を話すことができます。
民事上の請求については、虐待関連案件の経験のある弁護士に頼ることが望ましいです。弁護士に相談することで、虐待関連案件が求める賠償金の適切な金額を判断したり、訴訟手続きを進めるためのアドバイスやサポートを受けることができます。
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まとめ
この記事では虐待の時効を実際の事例を踏まえて解説してきました。そして加害者・被害者になった時にどうすればいいのか解説してきました。
加害者にとっては被害者と和解の手続き、被害者にとっては加害者を起訴・損害賠償の請求等を行うことが必要でしょう。
トラスト弁護士法人は虐待等のトラブルに強く、数多くの案件を取り扱っています。
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