早稲田大学の大学院生だった女性が、指導教員の男性教授から「俺の女にしてやる」とセクハラ発言を受けたなどとして損害賠償を求めた裁判が話題になっています。
大学などの教育機関でのセクハラ行為は「アカデミックハラスメント」と呼ばれることが多いですが、アカデミックハラスメントには様々な種類があります。
この記事ではアカデミックハラスメントとは何か、種類、被害事例・対処法についてまとめました。被害にあっている方は是非参考にしてください。
アカデミックハラスメントについて
アカデミックハラスメントの定義
アカデミックハラスメントとは、教育や研究に関わる者が、教員や上司などの立場や権力を利用して、学生や部下などに対して不当な扱いや嫌がらせを行うことを指す。アカデミックハラスメントには、以下のような種類があります。
・学業・研究上のハラスメント:無理な課題や期限の設定、成績や評価の操作、研究成果の横取りや盗用など
・人格・尊厳上のハラスメント:暴言や罵倒、脅迫や恫喝、無視や孤立させるなど
・性的ハラスメント:セクシャルな発言や行為、性的な関係を強要するなど
・パワーハラスメント:暴力や暴力的な態度、過度な監視や干渉、過剰な指示や命令など
より詳しい類型について知りたい方はこちらの動画をご覧ください。
アカデミックハラスメントは、被害者の学習意欲や研究能力を低下させるだけでなく、精神的・身体的・経済的な苦痛を与えます。また、アカデミックハラスメントは、教育や研究における信頼関係や倫理観を損なうだけでなく、学術界や社会全体にとってもマイナスの影響を及ぼす可能性があります。

アカデミックハラスメントにはたくさんの種類があります。自分が受けた被害に対して、どのような法律が関わっているのかも紹介するのでご安心ください。
アカデミックハラスメントを取り巻く近年の事例・具体例
下記に2つアカデミックハラスメントの事例を紹介させていただきます。
「女性優先」のアカデミックハラスメント
帝京大学の男性教授が、ゼミでは女子学生を優先的に採用するという内容のメールを男子学生に送ったとして、アカデミックハラスメントの疑いで内部調査委員会を立ち上げた事件。この事件は、学生がSNSでメールの一部を公開したことで発覚しました。教授は、女性だと思い優先的に採るつもりだったと説明しましたが、これは男女差別や教員の立場の濫用にあたるとして、大学は厳正に対処するとしています。
「セクハラ発言」のアカデミックハラスメント
早稲田大学の大学院生だった女性が、指導教員の男性教授から「俺の女にしてやる」とセクハラ発言を受けたなどとして損害賠償を求めた裁判で、東京地裁は、教授と早稲田大学に55万円の賠償を命じる判決を言い渡した事件です。
この事件は、女性が作家として活動する中で被害を告発したことで注目されました。教授は発言はジョークだったと主張しましたが、裁判所は人格権の侵害と違法性を認定しました。また、相談した別の教授が女性にも責任があると言ったことも配慮義務違反として追加で賠償を命じました。
参照:“ゼミは女子を優先” 男性教授にアカハラ疑い 帝京大が調査委、「俺の女にしてやる」早稲田大学教授(当時)のセクハラ訴訟 教授側に賠償命じる判決 東京地裁
これらの事件は、アカデミックハラスメントが社会問題として取り上げられるきっかけになりました。アカデミックハラスメントとは、大学などで優位な立場にある教授や研究者が、学生や部下に対して立場を利用した嫌がらせや不当な扱いを行うことです。
アカデミックハラスメントは、被害者の人格権や研究活動に重大な影響を及ぼすだけでなく、学問の自由や進歩にも悪影響を与える可能性があります。

近年アカデミックハラスメントは増えています。判例や事例は増えていますが、社会的にどう対処していくかが求められている状況です。
アカデミックハラスメントがなくならない理由
アカデミックハラスメントは近年、表に出る機会が増えてきました。しかし、依然として水面下で数多く存在します。アカデミックハラスメントがなくならい理由としては大学の組織的構造も関係しています。
アカデミックハラスメントがなくならない組織的構造
・教授会と組織運営(大学職員など)が分かれており、チェック機能が働かない。教授会は教員の人事や学位の授与などに関する権限を持ち、組織運営には干渉されたくないという姿勢をとっていることが多い。そのため、教授会内で発生するアカデミックハラスメントに対して、組織運営側は十分な対策を講じられないことが多い。
・研究者の価値は研究成果で決まるのであり、教育(指導)力は問われない。研究者は自分の専門分野における業績や評価を重視し、教育(指導)に対する責任感や関心が低いことが多い。そのため、教育(指導)する側は自分の思い通りに相手を扱うことができると考え、教育(指導)される側は自分の意見や感情を表明することができないと感じることが多い。
・加害者は広く学会などにも影響力を持っている。加害者は自分の分野で高い評価や権威を持ち、学会や雑誌の役職や審査員などに就くことが多い。そのため、被害者は加害者に逆らうことで自分のキャリアや将来に影響が及ぶことを恐れ、被害を訴え出ることができないことが多い。
これらの理由によりアカデミックハラスメントはなくなりにくいといえます。
アカデミックハラスメントをなくすためには、大学や研究機関だけでなく、教職員や学生も一丸となって取り組む必要があります。外部機関によるチェックも必要でしょう。

アカデミックハラスメントは、教育や研究の自由や品位を損なうだけでなく、被害者の人格や尊厳を傷つける重大な問題です。法律的にはどのように関わってくるのでしょうか?
アカデミックハラスメントに関わる法律と罰則

アカデミックハラスメントは、法律で明確に定義されているものではありませんが、民法や国家賠償法などの一般的な法律の適用が可能です。
アカデミックハラスメントを行った教員や職員は、民法709条に基づき、被害者に対して慰謝料や損害賠償を支払う責任があります。また、国立大学法人の教員や職員は、国家賠償法1条1項に基づき、国が被害者に対して損害賠償を支払う責任があります。この場合、教員や職員は国から損害賠償金の返還を求められる可能性があります。
また、アカデミックハラスメントを行った教員や職員は、大学の規則や規程に基づき、減給や停職などの懲戒処分を受けることがあります。また、研究倫理や学会規則に違反した場合は、研究費の返還や学会からの除名などの処分を受けることがあります。
前章でお伝えしたようにアカデミック・ハラスメントは表に出にくいため対処事例が少なく泣き寝入りするしかないと感じている人もいるかもしれませんが、対処法・対策方法を次にご紹介します。
アカデミックハラスメントの被害にあったらどうすればいい?
メモや証拠を残し大学へ相談
まずは具体的に何があったかをメモに残しましょう。時間を置かずに5W1H(いつ、どこで、だれが、何を、どうした、どうなった)を意識してメモすることが重要です。
そして記録・証拠を残しておきましょう。加害者とのLINEやメールのやり取り、着信履歴やネット上の書き込みなどは全て記録として残し、データを印刷物としても残すことも重要です。
そして大学の相談窓口へ相談の上、具体的な苦情を申し立てましょう。大学によって相談窓口や防止規定が異なるので確認しましょう。苦情を申し立てると大学が事実調査や処置を行ってくれることが多いです。
しかし対応が見られなかった場合は、弁護士や警察に相談する事が重要です。大事にしたくない思いもあるかもしれません。そんな時は弁護士へ相談してみるのがよいでしょう。
記事冒頭で紹介した深沢レナさんも弁護士に相談、そして時間がかかりましたが、アカハラが認められました。
アカデミックハラスメントの被害を弁護士へ相談
大学の窓口に相談する場合、費用はかからず、加害者である上司や指導教員などに対して直接働きかけてくれる場合もあります。しかし大学は加害者の身内という側面があり、加害者に対して積極的に処分を行うことは少ない傾向があることを覚えておく必要があります。このため、対処が不十分であると感じた場合は、別の相談先を探すことも検討する必要があります。
弁護士へ相談するメリットとしては下記が挙げられます。
・自分が受けている行為がアカデミック・ハラスメントに該当するかどうかがわかる。また、誹謗中傷等ほかの罪状に対しても追求できるか相談できる。
・真に自分の立場に立ったアドバイスが受けられる。
・加害者に対する損害賠償請求の準備が周到に進められる。
弁護士への相談は敷居が高いように感じられることが多いかも知れません。しかし初回相談は無料のことが多いです。一度ぜひ利用してみてください。
トラスト弁護士法人はセクハラや誹謗中傷といったトラブルに強く、初回の無料相談も行っており、24時間体制でお問い合わせを受け付けているため、スピーディーに問題を解決できるでしょう。アカデミックハラスメントに悩んでいる方はぜひ、トラスト弁護士法人にお問い合わせしてみてください。
今すぐ弁護士に無料相談するまとめ
今回は、アカハラ(アカデミックハラスメント)について、その意味や事例、対応法について解説しました。
大学という組織の構造上、一般的な企業に比べてアカハラがより顕著に現れる傾向があります。特に、教授と学生といった、大きな身分差が存在する関係性において、アカハラは深刻な問題となることが多いです。また、多くのアカハラは閉鎖的な空間で行われるため、被害が見過ごされ、深刻化することもあります。
しかし、一度問題が明るみに出れば、アカハラに関する裁判例も多数存在することから、その深刻さが浮き彫りになります。アカハラの被害者になってしまった場合は、速やかに証拠を集めたり周囲に相談するなど、積極的な対処が必要です。
大学がアカデミックハラスメントに対応してくれない際は弁護士に相談してみましょう。
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