インターネット上で流言やデマ、噂などによって風評被害に遭ったことはありませんか?風評被害は個人の信用や評判、精神的な健康などに大きな影響を与えます。この記事では、風評被害に関する法律や事例、個人ができる対策や相談先などを分かりやすく解説します。また、風評被害の加害者になった場合の対処法も紹介します。
風評被害に悩んでいる方は是非参考にしてください。
風評被害とはそもそも何?
風評被害の定義
風評被害とは、流言やデマ、噂などによって経済的な損害を受けることをいいます。風評被害は誹謗中傷と混同されがちですが、後者は虚偽の情報に加えてネガティブな評価が上乗せされたものです。風評被害は、事実に基づかない情報が拡散されることで起こります。

風評被害と誹謗中傷は似ているようで実は意味が違います。
風評被害を取り巻く近年の状況
風評被害は、インターネットやSNSの普及によって拡大しやすくなっています。特にTwitterはユーザー数が多く拡散力が高いため、注意が必要です。以下に、近年の風評被害に関するニュースを2つ紹介します。
・2023年3月11日、東日本大震災から12年が経過しましたが、福島県の農産物や水産物は未だに風評被害に苦しんでいます。国は重点品目としてコメや牛肉など6品目の価格変化を公表していますが、まだ全国平均を下回る状況が続いています。また、観光客数も浜通り地域では事故前の3分の1程度にとどまっています。政府は処理水の海洋放出を始める方針ですが、地元漁業者らは反対しています。
参照:朝日新聞
・2023年2月15日、東京都内で開かれた「コロナ禍で生き残る飲食店」セミナーで、「新型コロナウイルス感染症は中国から来たウイルスだから中華料理店は危険」という発言があったことが明らかになりました。この発言はSNSで拡散され、中華街や中華料理店に対する差別や偏見だということでひろく議論をよびました。もちろんこの発言は事実ではなく、科学的根拠もありません。中華料理店の経営者や従業員は、この発言に対して強く抗議し、風評被害の防止を求めています。
参照:企業が風評被害を受けた時

SNSやインターネットが出来てから、風評被害は広まりやすい世の中になりました。一度広まって定着してしまった評価を取り戻すのには長い時間がかかります。そうならないための対策や関わる法律は知っておくべきだといえるでしょう。
風評被害に関わる法律は?種類と罰則について

風評被害に関わる法律の種類と罰則・事例 風評被害に関わる法律としてはどんなものがあるのか紹介します。
風評被害に関わる法律の種類と罰則・事例
風評被害に関わる法律の種類と罰則・事例 風評被害に関わる法律としては、主に以下の4つがあります。
・名誉毀損罪(刑法230条)
・侮辱罪(刑法231条)
・信用毀損罪(刑法233条)
・業務妨害罪(刑法233条・234条)
これらの罪は、風評被害を引き起こした投稿者に対して刑事告訴することができます。それぞれの罪の内容と罰則、事例を見ていきましょう。
名誉毀損罪
名誉毀損罪とは、公然と事実を摘示し、人の社会的地位や名誉を低下させるような書き込みがなされた場合に成立する犯罪です。書き込まれた事実の真偽にかかわらず、成立する点に特徴があります。名誉毀損罪が成立した場合の刑罰は、「3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金」です。
例えば、「あの会社は不正会計をしている」「あいつは浮気性だ」というような内容の投稿が名誉毀損罪に該当する可能性があります。事実であっても、公共の利益や正当な理由がなければ、名誉毀損罪に問われることがあります。
侮辱罪
侮辱罪とは、具体的な事実を告げることなく公然と人を侮辱した場合に成立する犯罪です。例えば、「バカ」「ノロマ」といった暴言や悪口を使った抽象的な誹謗中傷は、侮辱罪に該当する可能性があるということです。侮辱罪で有罪になったときは、「拘留又は科料に処する」と規定されています。
信用毀損罪
信用毀損罪とは、故意に嘘の情報を流したり人を騙したりして、他者の信用を傷つける犯罪のことです。信用毀損罪が成立するには、以下の3つの要件を満たす必要があります。
・虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いること
・人の信用を毀損すること
・故意であること
信用毀損罪における信用とは、経済的な信用能力や商品・サービスの品質に関する社会的な評価を指します。信用毀損罪は親告罪ではなく、被害者の告訴がなくても刑事事件として立件される可能性があります。信用毀損罪で有罪になった場合の刑罰は、「3年以下の懲役又は50万円以下の罰金」です。
信用毀損罪の事例
信用毀損罪に問われた事例としては、以下のようなものがあります。
・コンビニで購入した飲料に洗剤を投入し、警察に虚偽申告
この事件は、加害者がコンビニエンスストアで購入したオレンジジュースに家庭用洗剤を注入し、そのうえで警察官に『ジュースに異物が混入していた』と虚偽の申告を行い、警察が報道機関にその情報を公開したというものです。このような行為により、コンビニエンスストア側は販売される商品の品質に対する社会的な信頼を害される結果となりました。元来、信用毀損罪が保護する「信用」とは、人の支払い能力や支払い意思に対する社会的な信頼であると解釈されていましたが、この事例においては、「販売される商品の品質に対する社会的な信頼」も含まれることが、最高裁判所によって示されました(平成15年3月11日の判決)。
・通販サイトに虚偽の低評価を投稿した女性
ある健康食品販売会社が大手通販サイトを通じて販売していたサプリメントについて、実際に商品を購入・使用したことがないにもかかわらず、『飲みにくかった』といったコメントをして、5段階評価で最低の評価をつけた女性が信用毀損罪に問われました。この女性は、仕事仲介サイトに登録しており、競合業者の会社役員からの依頼を受けて、虚偽の低評価を投稿していました。このような『やらせレビュー』を含む行為は、違法とされています。
この事件において、虚偽の低評価を投稿した女性は不起訴処分となりましたが、レビューを依頼した会社役員は有罪となり、20万円の罰金が課せられました。
偽計業務妨害罪
偽計業務妨害罪とは、虚偽の風説を流布したり、偽計を用いたりして、人の業務を妨害する罪です。偽計業務妨害罪が成立するには、以下の3つの要件を満たす必要があります。
・虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いること
・人の業務を妨害すること
・故意であること
偽計業務妨害罪の刑罰は、「3年以下の懲役又は50万円以下の罰金」です。
偽計業務妨害罪と信用毀損罪の違いは、以下のようにまとめられます。
・保護する法益が異なる:偽計業務妨害罪は人の業務を保護し、信用毀損罪は人の信用を保護する。
・行為内容が異なる:偽計業務妨害罪は虚偽の風説や偽計によって業務を妨害するが、信用毀損罪は虚偽の風説や偽計によって信用を毀損する。
・結果要件が異なる:偽計業務妨害罪は業務が妨害されるおそれがあれば成立するが、信用毀損罪は信用が毀損される結果が必要である。
個人への風評被害の事例と判決

個人への風評被害の事例にはどのようなものがあるのでしょうか?
事例と判決内容1:ネット掲示板でのなりすましによる名誉毀損
ある漫画家が自身の名前と顔写真を使用したなりすましアカウントで、ネット掲示板で第三者を罵倒するような投稿を繰り返されました。漫画家は名誉権や肖像権などの権利侵害として損害賠償を請求しました。
判決では、投稿者特定による通知書に投稿を行った回答をしており、それに対する反証活動もなかったため、名誉毀損と肖像権侵害が認められました。投稿者は漫画家に対して慰謝料60万円と弁護士費用70万6,000円の支払いを命じられました。
事例と判決内容2:HPでの根拠のない告発による名誉毀損
ある大学の教授が学生に過去の研究の不正疑惑を抱かれ、学生が作成したホームページ上でその旨を公開されました。教授は名誉毀損として損害賠償を請求しました。
判決では、学生側に教授の研究の不正を裏付けるに足りる十分な証拠がなかったため、名誉毀損が認められました。学生は教授に対して慰謝料100万円と弁護士費用10万円の支払いを命じられました。
参照元:平成22 (ワ)1314 損害賠償等請求事件等

個人への風評被害の事例はこの他にも数多くありますが、どのくらいの慰謝料や損害賠償が請求できるのかは、事例によって大きく変わるといえます。
個人ができる風評被害の対処法

風評被害に遭った場合、個人でもできる対処法としてはプロバイダ責任制限法に基づく投稿削除や発信者情報開示の方法があります。警察への相談方法なども紹介します。
対処法1:プロバイダ責任制限法に基づく投稿削除や発信者情報開示
プロバイダ責任制限法(令和3年法律第27号)は、インターネット上で他人の権利を侵害する情報が流通した場合に、その情報を提供した者やその情報を送信した者に対する責任や、その情報を送信した者の特定方法などを定めた法律です。この法律に基づいて、風評被害の原因となっている投稿がなされたネット掲示板や口コミサイトに問い合わせて、投稿削除や発信者情報開示を依頼することができます。
投稿削除とは、風評被害の原因となっている投稿をサイト運営者に削除してもらうことです。プロバイダ責任制限法第3条2項2号に基づき、サイト運営者に対して書面で削除依頼を行います。サイト運営者は、削除依頼が正当であると認められれば、速やかに投稿を削除する義務があります。

個人での投稿削除や発信者情報開示は非常に手間がかかり書類を用意するのも大変です。後述の弁護士への相談をおすすめします。
対処法2:警察に相談する
風評被害に遭ったことを警察に相談すれば、警察の力になってもらえることもあります。しかし、風評被害が刑法や各種法令上の罰則規定に基づいて加害者を罪に問えるケースでなければ、警察が出動することは原則ありません。
例えば、単なる悪口や批判ととれる内容は個人間で解決するべき問題とみなされ、警察に捜査してもらえる可能性が低いです。一方で、殺害予告や脅迫などの内容は刑事事件として扱われる可能性が高く、警察に相談することで捜査や逮捕などの措置を取ってもらえる可能性があります。
個人に対する風評被害の場合は確実な方法とは言えないでしょう。
弁護士へ相談するメリット
個人でもできる風評被害の対処法として、弁護士に相談することもおすすめです。弁護士に相談することで、以下のようなメリットが得られます。
・風評被害に対する法的な見解や対策方法を専門的にアドバイスしてもらえる
・投稿削除や発信者情報開示の手続きを代理人として依頼してもらえる
・被害者の立場を代弁して加害者やサイト運営者と交渉してもらえる
・損害賠償請求や訴訟の提起などの法的手段を取ってもらえる
・弁護士に相談することで、風評被害の問題解決に向けてスムーズに進めることができます。また、弁護士に依頼することで、精神的な負担や時間的な負担を軽減することもできます。
数多くのメリットがあるため、弁護士への依頼がおすすめです。
トラスト弁護士法人はSNS上のデジタル犯罪やトラブルに強く、数多くの風評被害にかかわる案件を解決してきました。また初回の無料相談も行っており、24時間体制でお問い合わせを受け付けているため、スピーディーに問題を解決できるでしょう。風評被害被害に悩んでいる方はぜひ、トラスト弁護士法人にお問い合わせしてみてください。
今すぐ無料相談する風評被害の加害者になった場合は

風評被害の被害者だけでなく、加害者にも注意が必要です。自分が投稿した内容が風評被害に当たるかどうかは、自分では判断しにくい場合があります。また、風評被害の加害者になった場合、法的な責任を追及される可能性があります。
加害者がすべき行動1:投稿した内容を削除する
自分が投稿した内容が風評被害に当たる可能性があると気づいた場合は、速やかに投稿した内容を削除することが必要です。投稿した内容を削除することで、風評被害の拡散を防ぐことができます。
また、投稿した内容を削除することは、加害者の反省や誠意の表れとしても有効です。被害者から損害賠償請求や訴訟を起こされた場合、投稿した内容を削除したかどうかは判決に影響する要素の一つです。投稿した内容を削除した場合は、慰謝料額の減額や和解の成立などのメリットが期待できます。
加害者がすべき行動2:被害者に謝罪する
自分が投稿した内容が風評被害に当たる可能性があると気づいた場合は、投稿した内容を削除するだけでなく、被害者に対して謝罪することも必要です。謝罪することで、被害者の怒りや不信感を和らげることができます。
また、謝罪することは、加害者の反省や誠意の表れとしても有効です。被害者から損害賠償請求や訴訟を起こされた場合、謝罪したかどうかは判決に影響する要素の一つです。謝罪した場合は、慰謝料の減額や和解の成立などのメリットが期待できます。
加害者がすべき行動3:弁護士へ相談する
自分が投稿した内容が風評被害に当たる可能性があると気づいた場合は、弁護士に相談することもおすすめです。弁護士に相談することで、以下のようなメリットが得られます。
・風評被害に対する法的な見解や対策方法を専門的にアドバイスしてもらえる
・被害者との交渉や和解の仲介を代理人として依頼してもらえる
・損害賠償請求や訴訟の提起などの法的手段に対応してもらえる
弁護士に相談することで、風評被害の問題解決に向けてスムーズに進めることができます。また、弁護士に依頼することで、精神的な負担や時間的な負担を軽減することもできます。
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今すぐ無料相談するまとめ
この記事では、個人への風評被害の事例と判決、個人ができる風評被害の対処法、風評被害の加害者になった場合の対応方法を分かりやすく解説しました。
風評被害は、インターネット上で簡単に発生しやすい問題ですが、その影響は深刻であり、法的な責任も伴います。自分が風評被害に遭った場合や加害者になった場合は、適切な対処をすることが重要です。
記事は以上です。風評被害に関する知識や情報が少しでも役に立てば幸いです。
もし現在、個人事業主で風評被害に遭っている方は、こちらの記事にも有効な対策をまとめたので参考にしてみてください。
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